カウンターという名のS席で

突然だけど、カウンター席が好きだ。


飲食店に入ると

「すみません、今カウンターしか空いてなくって、いいですか?」

「(え、むしろうれしいですありがとう。)あ、大丈夫ですよ。」

そして席に着くと

「やったカウンターだ。」(小声)


というくらい好きだ。


神田『The Blind Donkey 』に入った時も、そうだった。

奥に空いているテーブル席とカウンターが1席。

店員さんは私が店に入るなり、トゥーッス(by春日)と言わんばかりの"1人です人差し指"を見たときに

ふとどこに座らせようか、ちょっと間があった。


すると

「こちら(カウンター)でもいいですか。」

と言われた。

そこからは冒頭の私のセリフが繰り返される。


シェフの息づかい、食材の温度、全てが愛おしいカウンター席

席につくなり、正直悩んだ。

サンデーランチは1,800円。うっかりお財布の中は3,000円しか入れてきてなかったっけ。

デザートは800円、ドリンクに・・・ちょっと贅沢なランチにするか、ストイックにプレートだけにするか。

ふと悩んでメニューから顔をあげると、目の前のタルトレットが目に入った。

シェフが丁寧にクリームを乗せている。

その真剣な目つき、繊細にスプーンを振る手つき・・・クリームを乗せられていよいよ完成に近づくタルトレット。

キラキラと輝く砂糖漬けのピールが添えられて、テーブルへとタルトレットは運ばれて行った。


「ランチプレートと、、タルトレット。食後に。」


気がついたら、ランチプレートとデザートを頼んでいた。

無意識だ。手持ちのお金のことは一瞬忘れた。それでいいと思う。

隣の席の女性は、私と同じく悩んだ末に、プレートを食べ終わってからタルトレットを頼んでいた。

しかし、もうタルトレットは売り切れだった。


それを横目に頬張るタルトレット。

隣の彼女には申し訳ない。

罪悪感と幸福感のなかで食べるタルトレットは罪な味がした。


愛媛から届いたメイヤーレモンのピューレがアクセントの爽やかなタルトレット。

ザクッとしたタルト生地から香るバターの甘みと柑橘の甘み。


ワンプレートのランチは〆にメリハリが出るように、普段ディナーのタルトレットに使う国産レモンを使わずに、ほんのり甘みのあるメイヤーレモンを使っているそう。

「メイヤーレモンって甘いんですね。」

そう伝えると、先ほどまで真剣な表情をしてタルト生地を練っていたシェフが笑顔で教えてくれた。

「レモンのタルトレットはディナーの時にぜひ」

とも言われた。

ランチとディナーそれぞれ〆の違いが楽しめる。思わず、ゴクリとした。


目の前の臨場感から思わず頼んだデザート。そんなタルトレットの夜の顔も見たくなった。

これだからカウンター席はやめられない。


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 The Blind Donkey 

 東京都千代田区内神田3-17-4 1F

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